A銀行のTさんの話-会ったこともない人から学んだコト-

むか~しむかし、その昔。

20年前のお話(って書きながら20年も経過してることに衝撃……)

まだ、郵便局の窓口で働いていた時の話。

 

私は所謂「あなたの街の郵便局」 街中にある小さな、どこにでもある郵便局で働いてた。

この窓口業務って、分業制じゃなくて ローテーション制なんよ。新人の頃は郵便から始まって、次は貯金で保険…… って感じで覚えていく。

 

当然その中で「営業」ってモノをやらんとアカンようになるんよ。

解りやすい所やと、年賀状とか定期預金とか保険とかね。

窓口で声掛けするねん。

 

知って貰うために声掛けするのは当たり前やから、それ自体はしんどくもなかった。

だけどその店は、定期預金を勧めると こういって断られることが多かってん。

 

「A銀行のTさんに悪いから、辞めとくわ」 って。

 

A銀行とは、その郵便局の近くにあった銀行。

今はもう合併して無くなってるんやけどね。

 

このセリフを何回聞いたか解らんくらい、Tさんの名前はお客さんの口からよく聞いた。

今の担当さんやったら、そらしゃあないよな。

その時はそういう風に感じていた。

 

で、後で知ったんやけども。

 

A銀行のTさんは、その時点で近所の支店にはいなかったらしい。

銀行も含め、金融機関の異動サイクルは短い。大体2年から3年で異動する。

 

異動したにも関わらず、Tさんの顔を立てているお客さん。

この人一体どんな話法で、どんな風に顧客の心を掴んでるんや。

まだ若かった私は そんな風に感じていた。

 

そして、年齢を経て 仕事も色々経験して やっとTさんのセールス方法が解った。

 

恐らくTさんは 「顧客に対して誠実で真面目であった」だけなのだ。

 

変な小細工や小手先のテクニックではなく、顧客の心を汲み取り真剣に相対した。

それだけではないのか。

いや、そうとしか感じられないのだ。

 

これに気づいた時は、衝撃というより すごく腑に落ちた。

 

目先のことで躍起になって、利益を上げても 顧客の信頼を失えばそれまで。

逆に顧客の意志を尊重し、心に沿うようにすれば、長い目でお付き合いをしていただける。

それこそが本当の顧客サービスなんじゃないか。

 

まあ、そう思うようになって、そうやって仕事をするようになってんけどね。

 

自分の元を訪れてくれた人、出会った人、そして自分にも誠実であること。

顧客に必要のないものは勧めない、押し売りしない。

その大切さを、会ったこともない A銀行のTさんから学んだ。

 

そしてこれが、私が金融機関にいた間、ずっと心がけていたことやねん。

 

今は仕事が違うから、やってることは異なってるけれども

クライアントに必要なことは、ちゃんと伝えるようにしてる。

 

クライアントに対して、誠実であること。

その時その時全力投球でやること。

 

未だに私はA銀行のTさんの顔を知らない。

だけど何より大切な事を教えてくれた人だ。

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