人は誰しも、大切な人の死を受け止めて生きている。

ちょうど20年前の今日、父が亡くなった。

その20年の間に、私がどう立ち直って
どう生きてきたのかを、書いておこうと思う。

 

あの日も寒い日だった。

父が入院したのが11月で
その頃から、ずっと実家にいた。

父は緊急入院してから、ずっと集中治療室にいて。

それでも一度目を覚ましたので
元気と言えなくても、帰ってきて欲しかったんだ。

だから私はずっと言っていた。

 

「私の誕生日には、家に帰ってきてね。」

 

父は約束を守ってくれた。

ただ、冷たくなって帰ってきたけれども。

 

私は父の死に立ち会えなかった。

 

母が望まなかったのか

私が望まなかったのか。

 

なぜあの時、母と一緒に
病院に行かなかったのかは
覚えていない。

 

その間に、叔母たちがやってきて
一緒に父の帰りを待ったのだ。

 

そこからは慌ただしく時間が過ぎる。

 

葬式の準備、会社関係のお知らせ。
昔の写真を探してムービーにするなど。

父が河島英五さんが好きだったので
祭壇などは似た感じになった。

もちろん出棺の際にも河島英五さんの曲。

だが、酒の飲み過ぎでなくなった風に聞こえて
それはそれでどうだったんだ、とは思った。

 

気がついたら、父は小さな箱に入っていた。

ちゃんとお骨上げはしたはずだが
その辺り全く記憶にない。

 

あの頃、私はちょっとおかしかったのだろう。

勢いで仕事を辞めることにした。

そして有給休暇に入った。

 

3月くらいまで、自宅と実家を行き来し
4月から新しい仕事についた。

 

そうして私は、自分の生活を
暮らしを生きることで
ゆっくりと、父の死を受け入れた。

あくまで受け入れただけで
立ち直ったわけではないのだ。

 

だって、父の死は変わらない。

どれだけ望んでも、父は帰ってこない。

それはどうしても変わらない。

 

だが私は前を見て生きていかねばならない。

 

家族は頼れないし、一人暮らしだから
働かないと貯金も底をつくだろう。

かといって、仕事も公務員だったから
次の仕事がすぐに見つかるかも解らない。

私はまだまだ、生きないといけなかったから。

 

その後、無事に仕事も決まり、再就職もして
結婚もして、子供は出来なかったけれども
自分がやりたいことを仕事にも出来ているから
幸せな人生を生きている。

 

私が今、亡くなった人や霊の声を聞き
伝える仕事をしているのは
間違いなく、父の死があったからだ。

亡くなる前の3ヶ月間
父は意識が混濁していたから。

 

話したくても話せないし
もっと生きたかったんだろうな、と思う。

もっとしたいこともあっただろうし
もっと楽しみたいこともあっただろう。

定年後には、何がしたかったのかな。

ああ、もっと話せばよかった。

 

そんな思いが心の底にあったからだ。

 

霊能者といえど、ミディアムといえど
自分の家族の霊の声は聞こえない。

因果なものだ。

 

さらに私の場合は、未だに夢にも出てこない。

 

そこでどうしたか、というと

ミディアムに父と話す機会を作ってもらったからだ。

 

とは言いつつも、ミディアムは

「訪れた霊のメッセージを伝える」のが仕事。

 

なので、父が必ず来るとも限らないし
私も確か、父と話したい とリクエストしなかった。

なぜなら、その時点で13年経っていたから。

そして伝えられたメッセージを聞いて
涙が出たのだ。

 

その時の記憶があるから、今

私はこの仕事をしているのだろう。

 

私は父の死は、乗り越えていない。

ただ「この世にいない」事実は受け入れている。

 

そして、自分の命が尽きたときに
ちゃんと胸を張って、自分の経験を話せるように
生きていこうとしている。

 

大切な人の死を乗り越える、のは難しいだろう。

ただ、その人の思い出と記憶と共に
生きていくことはできる。

自分の心の中に、その人は生きているのだから。

そして、今の自分を見たならば

大切なあの人はどう言うだろうか?

どんな風に思うだろうか?

 

そう自分自身に問いながら、生きていく。

それは自分が大事だったあの人も
おそらく通った道なのだ。

 

死は乗り越えるものではなく

ゆっくりと受け入れるもの。

 

それには時間がかかる人もいる。

ただ、悲しみに浸り過ぎるのは良くない。

ゆっくりと自分の人生に戻っていかないと。

だってあなたは、生きているんだから。

 

人は誰しも、大切な人の死を受け止めて生きている。

 

どれだけ幸せそうな人でも

強そうに見える人でも

笑顔に溢れている人でも

誰かの死を受け止めて生きてる。

 

そして、私たちがいつか この世を離れる時。

わたしたちの死を、残していく人たちが受け止める。

 

その時、受け止めてくれる人に

幸せな人生だった、楽しかったよ、と

伝えられるように生きていきたい。

 

それが私たちが、この世に残していける

最後の贈り物なのだろう。

 

 

投稿者プロフィール

奄海るか
奄海るか薔薇の魔法師・ サイキックミディアム
世界に3人の薔薇の魔法師の1人でサイキックミディアム、いわゆる霊能者。金融機関17年勤務ののち、この世界へ。生きている人も亡くなっている人もリーディング出来、霊視、土地診断も可能で胡散くさい事は大体出来る。

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